1944年エドモン ルドニツカ作。
「発売当時の地下鉄の駅はこの香りで一杯だった」や「香水を知り尽くした人が最後に行き着く香り」などのエピソートがある香り。
ミツコと並んでシプレ フルーティの香りとして名前が挙がる一品です。
一時廃盤となり、1989年にオリビエ クレスプ作で再販されました。
私がもっているのも再販されたものです。

香りはプラムやピーチ等のフルーティが前面に出た、メロウなシプレ。
 
 femme_rochas
※2004/11/1 のレビュー
 
ネット通販で購入。ネットってすごいですね。諦めていた香水とかばんばん売ってます。

さて、香りですが、トップはかなりスパイシーですが、時間が経つにつれて甘くまろやかになっていきますね。かなりセクシーな香りに思えます。腐乱する直前の熟れた果実のイメージ。

シプレ系でピーチを使った香りといえば、ゲランのミツコを思い出しますが(大好きな香りです)、ミツコよりフルーティな香りが前面に出て、女性らしい香りに感じました。ミツコが「慎み深さ」「秘めた情熱」などをテーマにしていることを考えれば、イメージ的にも真逆といって良いかもしれません。
私的には、フランス映画に登場するヒロインってこんな香りをつけていそうな気がします。気まぐれで、勝気で、良くも悪くも女性。ちょっと憧れちゃいます。

かなり好みが分かれる香りだと思いますが、湿気の少ない真冬に、トレンチコートの胸元で漂わせたい香りです。

この香りを初めて知ったのは高校生の時でした。
再販されて間もなくだったのか、雑誌にも取り上げられていたりして「最後に行き着く香り」と言われると試さなきゃ!みたいな使命感をもって百貨店に乗り込んだ記憶があります。
そして、ファーストインプレッションは「カレーみたい」だったのを良く覚えています。
クセのあるスパイスが効いていて、かなりパンチのある香りだと思いました。

それから時は流れて、インターネットで香水が買えるようになったときに、どういうわけかこちらを購入したんです。
この頃もミツコを使ってましたし、シプレの名香が欲しかったのだと思います。

改めてレビューを書いてみると、トップはかなりスパイシー。
シプレの香りに特徴的なベルガモット等の柑橘はごくわずか。
クセのあるスパイシーさと、ドライフルーツのようなプラムやピーチがトップから主張してきます。
中盤はスパイスが引いて、フルーツの中にレザーっぽさのある香り。
ラストは、ようやく登場って感じの苔の香りとフルーツの香りでしょうか。
終始フルーツが香っていて、そこにスパイス、レザー、苔が乗っかる感じ。
ポートワインやサングインのような果実の熟れた甘みが印象的。 


確かにミツコと同じ系統だとは思うのですが、ミツコの和風にも思えるお香っぽさはなく、メロウな甘さのフルーツの割合が多くて、男性でも大丈夫なミツコと比べると、とても女性的。
シプレのミステリアスさ、陰のある感じがベースにありつつ、肉感的なフルーツとスパイスが絡み合う香調は退廃的で、やはり時代を感じさせるクラシックさがあります。


昔のレビューで「腐乱する直前の熟れた果実のイメージ」などと書いていますが、これは映画「ブルー ベルベット」の評論の中に書かれていた、イザベラ ロッセリーニに対する言葉を当てはめた記憶があります(評論を見ただけで、映画そのものは観てません)。
 
「フランス映画のヒロイン」とも書いていますが、この香りを嗅ぐと、とにかくヨーロッパの映画が思い浮かぶんです。
 
内に狂気を秘めた、美しく退廃的なヒロインのイメージ。
 
例えばミケランジェロ アントニオーニ監督「赤い砂漠」のモニカ ヴィッティあたり。
…たぶん昔のレビューもこの人をイメージして書いていたと思います。
フランス映画…と言いつつ、挙げた名前がすべてイタリア系であるのは、、ご愛嬌ってことで(笑)。
 

私の所有している香りの中では、使いづらい香りベスト3には間違いなく入る香り。
似た香調のミツコは大好きなのに、なぜか好き…とは言えない。 
未だに映画の中の香りです。


調香:ピーチ、プラム、サンダルウッド、ローズウッド、レモン、ローズ、ジャスミン、オークモス、パチュリ、ムスク、アンバー、シベット、レザー
※Now Smell Thisにリフォーミュラ後の調香として掲載されていたものを載せましたが、スパイスが入ってないのは不思議な感じです。